組織人事戦略研究会
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組織人事戦略研究会 第28回研究会開催
 
テーマ 「パタゴニアの理念に基づく組織運営  〜社会変革を目指す取り組み〜」
内容
 2011年9月の事例研究会は、
パタゴニア日本支社 支社長 辻井 隆行 様をゲストにお迎えします。


■講演のポイント

パタゴニアは1972年にイヴォン・シュイナード氏が創業したアウトドア衣料品の製造販売会社です。同社は、「地球環境を守る」ことを第一優先に掲げ、経営から現場まで、徹底的に理念に沿った判断をすることで、世界的にビジネスを展開してこられました。

創業者の「社員をサーフィンに行かせよう」と奨励している言葉に代表されるように、会社は、社員の一番働きやすい方法を支援し、勤務時間中にスポーツに出かけたり、まとまった余暇や育児休暇をとることを許しています。

今回は、パタゴニア日本支社長の辻井様に、日本において「理念に沿った信頼できる社員を採用するポイント」や、「理念に沿った組織運営をどのように行っているのか」
事例を交えてお話しいただきます。
講師
プロフィール
■講演者プロフィール

1968年  東京生まれ 
1991年  日本電装(現デンソー)入社
1995年  早稲田大学大学院社会科学研究科(地球社会論専攻) 修士課程入学 
1997年  シーカヤック専門店「エコマリン東京」 入社
2000年  パタゴニア入社 
2009年  パタゴニア日本支社長に就任



   
■日時 2011/9/14(水)18:45〜22:00(開場:18:30)
※21:00〜22:00は講師参加の懇親会です。
   
■会場 銀座フェニックスプラザ 紙パルプ会館
(東京都中央区銀座3-9-11紙パルプ会館)
地図:会場までの地図はこちらをご確認下さい.
   
■定員 25名 【終了しました】
   

 
第28回研究会 ご報告


今回の組織人事戦略研究会は「パタゴニアの理念に基づく組織運営  〜社会変革を目指す取り組み〜」という研究テーマで開催しました。
ゲストスピーカーはパタゴニア日本支社 支社長 辻井 隆行 様です。

前半では、グローバルとしての企業概要やミッション・ステートメント明文化の経緯、ミッション・ステートメント実現に向けた取り組みをお話して頂きました。
後半では、企業理念に基づいた日本支社での組織運営についてお話して頂きました。


■パタゴニアのミッション・ステートメント
パタゴニアのミッション・ステートメントは「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として、環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というもの。

最高の製品とは、アウトドアでこれだったら命を預けられると言われるような製品。そして、同じ最高のものが作れるなら、環境に配慮したものを作りましょう、というのが考え方です。
この考え方は“There Is No Business To Be Done On A Dead Planet”(死滅した地球では、ビジネスは成り立たない)という環境活動家のデイビッド・ブラウワー氏の考え方がベースになっていると辻井様は話されました。

■ミッション・ステートメント明文化の経緯
このようなミッション・ステートメントが明文化された背景には、ある気付きがあり、きっかけとなったそうです。

明文化された経緯を、辻井様は以下の様に、話してくださいました。
製品の主要4繊維(ポリエステル、ナイロン、コットン、ウール)の環境負荷を調査したところ、全てに害があることが分かったそうです。
つまり、自分たちが製造しているものは全て地球を汚染していたことが分かったのです。それが、真剣に考えるきっかけになった。が、だからと言って、原始的な暮らしに戻るわけにもいかないし、経済活動をやめるわけにはいかない。だからこそ、環境への配慮といった、経済活動を行う際のルール以外の事を経営判断に持ち込み、新しい資本主義のやり方を実践したらいいことが起こるんじゃないのか、というのが明文化の経緯だそうです。

■オーガニック・コットンへの転換
環境負荷の事実が分かった時、創業者のイヴォン・シュイナード氏は例えコストが上がっても、オーガニック・コットンに切り替えることを決断したそうです。

さらに、「アメリカ企業の見本になりたければ、利益を上げなければならない。しかし利益はゴールではなく、それ以外の事をしっかりやっていればついてくるもの」として、ただ単に環境へ配慮するだけではなく、利益を上げるという事も同時に達成していくことを目指しました。
利益を上げていくことで、パタゴニアの環境配慮への取り組みが資本主義社会に波紋のように広がり、社会変革に繋がれば良いと考えていると、辻井様はおっしゃっていました。

■波紋の広がり
パタゴニアがオーガニック・コットンに切り替えたとき、ナイキやリーバイスが本当にそれでビジネスが成り立つのかと、取り組みについてヒアリングに来たそうです。
その結果、ナイキも売上の1%をオーガニック・コットンに切り替えるという事になり、それも社会変革の一つではないかと辻井様はおっしゃっていました。

またある時、ウォルマートからイヴォン・シュイナード氏にバイヤーズミーティングでの講演依頼があったそうです。
ウォルマートはエブリデーロープライスの販売戦略で急速に成長し、世界最大の売上を誇っていましたが、このままでは資源がなくなり未来がないとの考えから、セーブマネーリーブベターへと方向転換。その見本としてパタゴニアの例に興味を持った経営幹部から招聘され、ウォルマート社にてパタゴニアの理念や取り組みについて講演されたそうです。
そのスピーチの後、ウォルマートの当時のCEOがバイヤーに向かって、「これから後の一年で取引先の社会的責任と環境的責任を調べ、その後の一年で取引している材料の一つ一つの成分を解析して出してもらいなさい。なんでそんなことをするんだと思う人はすぐにこの場を去りなさい。それがエキサイティングだと思う人にはそれなりの報酬が与えられるだろう」と言ったそうです。
それを聞いたイヴォン氏はとても感動し、「どんな波に乗った時よりも、どんな山を登った時よりも興奮した」と、辻井様に語られたそうです。

その後、ウォルマートとパタゴニアが提携した“Sustainable Apparel Coalition”の活動が始まり、そこには37社のグローバルなアパレル企業が参集。これらの企業すべてを合わせると世界のアパレルの70%以上の売上になるという規模になり、これまであったアパレルのインデックスに環境負荷や社会的な負荷もわかるようにしようという取り組みが進められているそうです。

■日本支社での組織運営
組織運営を考える上で重要なのは、戦略や理念があったとしても、それにあった組織構造と人材がしっかりあり、またそれに準じてオペレーションし、結果をきちんとレビューした上で翌年の戦略に反映していかなければ、絵に描いた餅にすぎないとだろうと辻井様はおっしゃっていました。

■採用・登用(プロセス、求める人物像、人事異動)
採用・登用においては、現場のマネージャーに一任し、自分は介入しないとのこと。
最終的には辻井様も面談されるようですが、現場を分かっている人が決めた方がいいから、僕の段階でダメというのはほとんどないとおっしゃっていました。
そして、採用時の審査項目として特に重視するのは、(1)プロとかアマとかは全く関係なく実際にアウトドアスポーツに真剣に取り組んでいる人、(2)環境問題に関心の高い人、だそうです。
採用時から、パタゴニアの理念に合うかどうかは重要なポイントになっているようです。

また、登用に関しては、パートタイムを含め、社内の中からジョブオープニングをかけているそうです。
それは、一からパタゴニアの事を知ってもらうより社内にいる方に、勉強してやってもらった方が良い結果になっているケースが多いからということだそうす。

■「社員をサーフィンに行かせよう」は実践している?

イヴォン・シュイナード氏の「社員をサーフィンに行かせよう」という著書がありますが、それはサーフィンでなくても何でもよくて、以下の5つのポイントを醸成させることに繋がると考えるから、そう言っているんだとおっしゃっていました。

(1)責任感:いちいち上司に言わなくても自分で判断して考えられるようになる。
(2)効率性:明日の昼に波が来るなら、それまでに仕事を終わらせようとするので、限られた時間で成果を上げられる。
(3)柔軟性:いつ行こうと決めていても、天候などで変わったりするため、柔軟に対応できなければならない。
(4)協調性:フライフィッシングが好きな人やスノーパウダーが好きな人など様々なので、お互いに補い合うようになる。
(5)真剣なアスリート:本当に自分の使った感想で、自分の言葉で良い悪いを正直に話せるようになる。



■年度目標の設定(全員参加型の合意形成)
会社のビジョン(=ミッション・ステートメント)と日々の業務にはギャップがあるもの。その間を埋めるために、各支社、各部署ごとにもビジョンを設けているそうです。
それも一方的に決めるのではなく全員の話し合いで決め、またその意味合いはひとつのビジョンが達成できたら次のビジョンへと移るというようなものではなく、ずっと変わらない指針となるものとしているそうです。
具体的には、「自分が何者で、何を目指し、どこに向かっていくかを説明してくれるもの。自分たちを導いてくれる光」だとおっしゃっていました。
そして、それを更に噛み砕いたのもをプライオリティーとし、ビジョンを実現するために一定期間で達成すべき優先課題で、年度毎に2つから3つ定めているそうです。
これは、直営店でも20年経っているところと新店など、店舗によってやるべきことが違うので、それを会社が決めるのではなく、マネージャーがみんなと話し合って決めているとのことでした。

プライオリティーを決めるためには2つの前提条件があり、1つはミッション・ステートメントに合致しているかどうか、もう1つはビジネス環境、所謂SWOTみたいなものを鑑みて、ミッション・ステートメントとSWOTの掛け合わせで決めているそうです。

また、それを決めるためのルールやポイントもご紹介いただきました。
ルールは、(1)正直に言う、(2)正直に言った場合の前言撤回はいつしてもいい、(3)ローカルトークはしない、ちょっと思ったことも隣の人に確認するのではなく全員に言う、ということだそうです。

さらにポイントは、バイアスの排除にあり、多数決のバイアスを排除するために、ハンドシグナルで合意形成をし、上下関係のバイアスを抑えるために外部からファシリテーターをいれていると、具体的なお話を交えながら説明してくださいました。

最後に、これらのプライオリティーが役に立っていたのかをみるために、レビューの仕組みの受け皿を作っておき、ボトムアップとトップダウンの仕組みを上手く作れるようにやっていると、実際に書いたメモをお見せ頂きながら、お話してくださいました。



■討議
講演に続いて、「社員の主体性を引き出す取り組み」を議題として参加者による討議が行われました。
参加者に行ったアンケートでは、「皆様の会社でも、社員の主体性を引き出す取り組みをされていると思いますが、その効果はいかがですか?」という問いに、50%(18人中9人)が「効果が出ている」という結果でした。
ある企業では、「主体性」を採用基準の必須項目としており、採用活動の一環として、新卒でも、既卒でもインターンシップに参加してもらい、実際の実務に近しいことをしてもらい、そこでどう仕事に取取り組むのか主体性を見ているとのことでした。
その企業では、採用段階で主体性がある方を採用しており、もちろん理念共有も必須項目としているので、効果が出ているとのことです。
それに対して、辻井様や皆様も興味を示され、特に既卒の方へのインターンシップ参加はどうやって実施されているのかなど、具体的な質問が飛び交っていました。

その他にも、各社の取り組みや課題をファシリテーターがヒアリングしていきながら、辻井様をはじめ皆様で討議を行い、たいへん盛会の後に懇親会へと進みました。



■参加者の声
環境保全というミッションを、経営にどうリンクするべきなのか?極めて実践的なケースを理解できた
理念経営を実践するには、日々の業務にいかに繋げるかが大切だということに気付いた
環境についての具体的な取り組みが興味深かった。小さな動きがウォルマートを動かした話に共感した
お話頂いた内容が、辻井様の人柄を含めて、とても自然な印象を受けました。まさに“生きた指針”というように感じ、大変感動した
ビジネス⇔環境問題を両立させることにチャレンジし続けるという気合に感動した
社内に理念を伝えていく際の参考になった
熱い思いを感じられ、大変勉強になった
活き活きしている組織は、トップから滲み出てくるもの





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